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経営管理の原理原則:「Pull System」で進めるマネジメントとは

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常に後工程を重視した仕事をする!後工程(依頼者)の役割と責任

企業の仕事で効率的に成果をあげるためには、「Pull System」の手法が不可欠となります。
製造業で生み出された考え方ですが、経営やさまざまな仕事にもあてはまるものです。
お客様を最終工程とし、常にお客様により近い後工程を重視して仕事を進めます。

「Pull System」を採用していくことで、必然的に仕事を考えながら行っていくようになります。
仕事を熟考しながら行う中で、「与えられた環境」の理解と「改善対象の見極め」も必要です。
変化を生み出す必要性を感じるとき、常にまずは、自らが動くことを実践し、変わることに努めます。
これらが、「Pull System」の考え方です。

では、「Pull System」で進めていくマネジメントのポイントを詳しく確認していきましょう。

<目次>
■ 「Pull System」はお客様を第一に考える効率システム
■ 人や組織の可能性を引き出す管理者の見極めポイント
・Pull Systemが「考える仕事」を生む
・与えられた環境と改善対象を見極める
・「与えられた環境」は変えるものではなく変わるもの
■ まず自らが動くマネジメントが変化を起こす
・後工程(依頼者)の役割と責任
・後工程の適切な配慮の育成効果

「Pull System」はお客様を第一に考える効率システム

仕事には多くの人たちが関わっています。
企業は、複数の人で仕事をスムーズに進め、より良い成果につなげなければなりません。

そのためには、スタートから終了までの工程をいくつかに分け、それぞれの業務の担当を決めて分業体制を構築するなど、一連の「流れ」の中で仕事を行っていく必要があります。

この流れについて、もっとも分かりやすくイメージできるのが製造業の現場でしょう。

製造業の製造現場における流れ作業には、「Push System」と「Pull System」という2種類の方法があります。

「Push System」
Push Systemとは、前工程が、後工程に向けて、必要な原材料や情報を、あたかもポンプで押し込むようにどんどん供給していく=Pushするやり方です。実際の需要に合わせるものではありません。

「Pull System」
Pull Systemとは、後工程が、必要な原材料や情報を必要となるタイミングで前工程に取りにいく=Pullするやり方のことです。後工程の最終は顧客ですから、需要に合わせた手法と言えます。

現在、製造業の現場では、「Pull System」が主流となっています。
受注から納品までのリードタイムを最短にできるシステムだからです。
リードタイムが短くなれば顧客満足につながりますし、ムダな在庫を抱える心配も大幅に減少します。これらのメリットが得られることから、多くの製造現場でこの方法が採用されているのです。

製造現場だけに限らず、仕事は「Pull System」で行っていくべきでしょう。
なぜなら、「Pull System」は、お客様第一で考えていくシステムだからです。

より市場やお客様に近い「後工程」が、必要な情報や素材などを前工程に用意してもらうほうが効率的です。

逆にいえば、「前工程がつくってしまったものを必要かどうかに関係なく後工程へ流していく」という「Push System」では、お客様のことを第一に考えた仕事を進めることはできないのです。

人や組織の可能性を引き出す管理者の見極めポイント

「Pull System」は、もともと製造現場で誕生したシステムです。
実は、経営をはじめ、あらゆる仕事に応用することができます。

Pull Systemが「考える仕事」を生む

お客様に一番近いところで仕事をしている後工程を起点にするというのが、「Pull System」の基本的な考え方です。

どのような仕事でも、お客様にもっとも近いところで仕事をしている人を起点とすることで、お客様のことを「真面目に」「良く考える」という仕事ができてきます。必要な原材料や情報をタイムリーに入手しようと努力するようになるのです。すると、この後工程の要望に応えて、前工程はちょうど良いタイミングで必要な材料や情報を提供する努力をするようになるでしょう。

それぞれの工程に携わる一人ひとりが「考えて仕事をする」ようになるため、それぞれの能力アップにもつながっていくはずです。一人ひとりが「考えて仕事をする」という組織内の連鎖が、組織全体の生産性アップや競争力強化など、組織能力の向上を実現していくのです。

自分自身の身体に当てはめて考えると、もっとよく分かるかもしれません。
好物を食べたいだけ、お酒も飲みたいだけ飲む、いわゆる暴飲暴食が「Push System」です。
ストレス発散などには効果的なことかもしれませんが、いずれ内臓などに負担がかかって身体を壊してしまうでしょう。

健康な身体を保っていくためには、身体が必要としている物を必要な分だけ「考えて」摂っていきます。食事ひとつにしても、考えながら摂ることによって、良い結果(健康)が手に入るのです。

企業では多くの人が関わる仕事をスムーズに行い、より良い結果へとつなげる必要があります。
すべてを「Pull System」で進めることを基本概念として理解しておきましょう。

与えられた環境と改善対象を見極める

「Pull System」を端的に言い表すと、「真にお客様目線で仕事をする」ということができます。
「真にお客様目線」になることで、的を射た改善すべき点が見えてくるはずです。
見えてくる「必要な」改善を重ねることで、業務の効率化やミスの削減ができ、より良い成果につなげることができていくでしょう。とはいえ、何でもかんでも「改善」すれば良いというわけではありません。

改善に取り組むにあたっては、見極めなければならないことがあります。
「本当に改善の対象なのか」
「受け入れるべき与えられた環境ではないか」

この2つの見極めをしっかり行うことが大切です。

仕事に置き換えてみましょう。
たとえば、「上司と気が合わない」「上手くいかない」ということもあるでしょう。あるいは、「親会社や仕事の発注先から無理難題を押し付けられる」ということに直面するかもしれません。

自分自身が仕事に対して精一杯努力して取り組み、成果を出すことを望む場合、何らかの変化の必要性を感じるはずです。そのとき、結果が出せないことに対して自分自身を改めることより、自分以外のものを変えることを考えてしまうことがあります。

「上司の考え方を変えてもらうように、上司の上司に働きかけて改善したい」
「親会社の要求をまず変えさせてから改善に取り組もう」といった考えを持ってしまうようなことです。

しかし、「直属の上司」であれ「親会社」であれ、それは「与えられた環境」であり、「改善すべき対象」ではありません。自分自身ではなく、相手を変えるための改善に取り組んでしまうと、その結果は労多くして功少ないものとなってしまいます。それらは「与えられた環境」と受け止め、自分自身の改善に取り組んだ方がはるかに現実的で効果的なのです。

「与えられた環境」は変えるものではなく変わるもの

「与えられた環境」というのは、永遠に不変なものではありません。
自分側にある一つひとつの「改善の対象」をしっかり改善して成果を積み重ねていけば、
「与えられた環境」だったものがいつしか「改善の対象」に変化することも少なくありません。

自分たちが改善を重ねて要求に応え続けることで、親会社から歩み寄ってくれることもあるのです。
また、最近の技術進化は目覚ましいものがありますから、現時点の技術力では不可能だったことでも、明日には可能になることも考えられるでしょう。

それでも、まずは現時点で「与えられた環境」と考えられるのであれば、むやみに手を出して変えようとせず、見送る勇気を持つことが必要なのです。

「改善の対象か否か」の見極めは、仕事で成果をあげられるかどうかに大きく関わってきます。
言い換えると、見極めが上手くいけば仕事は成功させることができるのです。

「Pull System」をしっかりと機能させて、人や組織の可能性を引き出すために、まずは全力でこの「見極め」に取り組むことを肝に銘じておきましょう。

まず自らが動くマネジメントが変化を起こす

ある製造業の企業で、取引先から依頼される仕事にかなりのムラがありました。
生産管理の担当者は、仕事を平準化するために取引先と交渉しようと考えました。
その担当者の上司は、「待て、まず、我々に対応できる力があるかを考えよう」と引き止めました。

私たちは何か上手くいかないことがあると、自分以外にその理由を求めてしまいがちです。
この上司が、相手が変わればうまくいくと考えている担当者を引き止めたように、しっかり考える必要があります。本当に、相手に何かを要求できるだけの準備がきちんとできているかということを考えなければならないのです。相手を変えたいと思うときは、まず、自分を変えることが大切なのです。

思い出して欲しいのが「隗(かい)より始めよ」という言葉です。
これは中国の戦国時代、燕(えん)の昭王に「どうすれば賢者を集めることができるか」と相談された郭隗(かくかい)が、「賢者を招きたければまず凡庸な私を重用すべし。そうすれば優れた人物が自然に集まってくる」と答えたという故事に由来します。
そこから「大事業をするには身近なことから始めよ」あるいは「物事は言い出した者から始めよ」という意味で使われるようになりました。

企業を取り巻く環境は常に変化し続けています。それに伴って企業も変わり続けなくてはなりません。
ただ、いくらトップが「変われ!」と号令しても、簡単に変われるものではないでしょう。

そんなときこそ、発想を変える、仕組みを変える、言葉を変えるなど、まずトップである自分が率先して変わっていく必要があるのです。

後工程(依頼者)の役割と責任

まず自分が動き変わることが大切ということをお伝えしました。
これは、「Pull System」の根本原則的な考え方でもあります。

トヨタ自動車は、2000年に21世紀に向けた原価低減活動として「CCC21(Construction of Cost Competitiveness 21)」を行いました。これは、同社の主要173品目の製品に関して、原価30%の低減を推進する取り組みです。世界最安値を実現し、グローバルな競争力を高めるためのものでした。

トヨタがこれを実現するためには、取引先なども含めた大々的な意識改革が不可欠でした。
そこでトヨタ自動車は、設計そのものを見直すなど、自らが身を切る改革を行いました。
それにより周りを巻き込むことができ、30%の原価削減を実現できたのです。

たとえ上司であれ社長であれ、「人に何かを依頼する」人は、「Pull System」でいうところの「後工程」にあたります。自分がやりたいことを実現するために、必要な情報収集や部品づくりなどの仕事を、「前工程」となる部下や外注先企業などに依頼することになります。

その依頼の際に「後工程」(依頼者)として、「何が必要か」「いつまでに必要か」「どのくらい必要か」などの情報を準備し、「前工程」(依頼先)に提供しなくてはなりません。もっと言えば、「どの部下に頼むのが最適か」「どの外注先企業に頼むのが合理的か」というところまで考えなくてはならないのです。

製造現場を見るとよく分かりますが、「Pull System」では、「後工程」が必要な情報をきちんとまとめて「前工程」に伝えることができないと、仕事はスムーズに流れません。

依頼をする側(後工程者)の発信する内容がしっかりしていることが成果を上げる仕事の大前提になるということです。提供する内容が、曖昧だったり間違えていたりすると、「Pull System」として機能させることはできないのです。

後工程の適切な配慮の育成効果

上司と部下でいえば、上司が後工程で、部下が前工程になります。
「後工程」の人は、必要とする情報をきちんとまとめて「前工程」の人に伝えます。
この適切な配慮を続けることによって、依頼される人(前工程)は成功体験を積み重ねることができます。その実体験が、彼らの意識を確実に変えていくことでしょう。

自分がきちんと仕事をやり遂げ、成果を出すことができたのは、上司がきちんと準備をしてくれていたからだ、という記憶と経験の蓄積が部下に残るでしょう。「後工程としての上司の依頼時の配慮」の記憶は、いずれ部下たちが仕事を依頼する立場(後工程)になったときに、彼らが行う配慮として受け継がれていくでしょう。

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